海辺の街の奥へ
ファーストランディングへ行くと、バージニアビーチの印象が変わる。
バージニアビーチと聞いて、多くの旅人が思い浮かべるのは、三マイルのボードウォーク、オーシャンフロントのホテル、海沿いのレストラン、夏の家族旅行、明るい浜辺である。そのイメージは間違っていない。バージニアビーチには、海辺の都市としてのわかりやすい楽しさがある。朝は海を見て、昼は浜辺で過ごし、夜は海鮮を食べる。その便利さが、この街の大きな魅力である。
しかし、バージニアビーチをそこで終わらせると、あまりにも浅い。オーシャンフロントの北に、ファーストランディング州立公園がある。ここへ入ると、海辺の都市の音量は一段下がる。ホテルの列は消え、松林、湿地、砂丘、湾の浜辺、曲がった木々、長いトレイルが前に出る。バージニアビーチは、急に自然の街になる。
ファーストランディング州立公園は、単なる休憩場所ではない。バージニア州公式情報では、一六〇七年にイングランドからの入植者が最初に上陸した場所として説明されている。また、二十マイル以上のトレイル、一・五マイルのチェサピーク湾側の浜辺、キャンプ、キャビン、自然センターを持つ州立公園である。国立公園局も、この場所を一六〇七年の上陸にちなんで名付けられた二八八八エーカーの公園として紹介している。
つまり、ここには三つの層がある。第一に、自然の層である。森、湿地、砂丘、湾、鳥、道。第二に、歴史の層である。一六〇七年の上陸、植民地の始まり、海から来た人々の記憶。第三に、現代の休息の層である。キャンプ、キャビン、家族のピクニック、トレイルラン、湾の浜辺での午後。ファーストランディングは、この三つが重なるから強い。
ファーストランディングを歩く時、歴史は案内板だけにあるのではない。むしろ、海から来た人間が最初に見たであろう風景の断片を、今も自然の中に感じられることが重要である。湾の水、松林、砂の道、湿地、海風。もちろん現在の公園は管理され、整備され、現代の利用のためにつくられている。それでも、オーシャンフロントの都市景観から少し離れるだけで、バージニアの始まりを海辺の風景として想像できる。
国立公園局は、この公園が一九三三年から一九四〇年にかけて市民保全部隊によって整備され、国家歴史登録財に関係する場所であることも紹介している。つまり、ファーストランディングは一六〇七年だけの場所ではない。二十世紀の公園づくりの歴史も重なっている。自然を保護し、市民に開き、州立公園として整備した歴史がある。
ここで大切なのは、歴史を一枚の看板にしないことである。一六〇七年の上陸、先住の土地、植民地史、州立公園整備、市民保全部隊、現代の家族旅行。それらが同じ場所に重なっている。ファーストランディングを歩くとは、海辺の都市の中に残った、複数の時間を歩くことである。
トレイルを歩く時、旅人に必要なのは「どれだけ回ったか」ではない。どの速度で歩いたかである。ファーストランディングには、人気の高い道もあれば、静かな道もある。夏は暑く、湿気もあり、虫も出る。春や秋は歩きやすく、冬は空気が澄む。季節によって、同じ道でもまったく違って見える。
ケープヘンリー・トレイルは、広く使われる道であり、初めての人にも比較的わかりやすい。だが、短い散策でも、靴、水、日差し対策は必要である。湿地に近い場所では、虫対策も考えたい。都市のすぐそばにある公園だからといって、自然を軽く見ないこと。森は、ホテルの庭ではない。
子ども連れなら、歩く距離を最初から短めに設定したほうがよい。トレイルを全部歩くことを目的にせず、自然センター、短い道、湾の浜辺、ピクニックを組み合わせる。暑い季節なら、午前中に歩き、昼は休む。旅行では、完走より余裕が大切である。
大人だけの旅なら、朝のトレイルをすすめたい。人が少なく、空気がまだ重くならず、鳥の声も聞こえやすい。歩いた後、ショア・ドライブ沿いで食事をする。午後はホテルへ戻るか、チェサピーク湾側の浜辺で休む。ファーストランディングの良さは、歩くことと休むことが近い距離にある点である。
泊まる公園
ファーストランディングは、日帰りだけでなく、泊まれる自然でもある。
ファーストランディングには、キャンプ場とキャビンがある。これは、バージニアビーチ旅行の中ではとても面白い選択肢である。オーシャンフロントのホテルではなく、州立公園の中に泊まる。朝、森の中で目を覚まし、湾の浜辺へ行く。夜は街の光ではなく、公園の静けさに戻る。バージニアビーチでありながら、まったく違う滞在になる。
ただし、公園宿泊はホテルとは違う。予約、設備、持ち物、食事、寝具、キャンセル規定、チェックイン、火気、ペット、季節の条件を確認する必要がある。便利な都市ホテルのように、何でもすぐに用意されているわけではない。自然に近いぶん、準備が必要になる。
一方で、オーシャンフロントやショア・ドライブ沿いのホテルに泊まり、日帰りで公園へ行くのもよい。デルタ・ホテルズ・バージニアビーチ・ウォーターフロント・スイーツはショア・ドライブ二八〇〇番地にあり、チェサピーク湾側の滞在に向く。北側のオーシャンフロントでは、ザ・キャバリアーやヒルトンなども、ファーストランディングへのアクセスを考えた宿泊候補になる。
宿を選ぶ時は、旅の主役を考えたい。ボードウォークが主役なら、オーシャンフロントに泊まる。ファーストランディングと湾が主役なら、ショア・ドライブや公園宿泊を考える。高級感が主役なら、ザ・キャバリアー。家族の実用性なら、デルタやオーシャンフロントのホテル。自然の時間なら、公園のキャビンやキャンプ。バージニアビーチは、宿によって旅の性格が大きく変わる。
季節と注意
ファーストランディングは、季節によって歩き方を変える。
春と秋は、最も歩きやすい季節である。気温が穏やかで、トレイルと湾の浜辺を組み合わせやすい。夏は、朝早く歩くことをすすめたい。日差しと湿気が強く、虫も気になる。昼に長く歩くより、午前中に自然、午後は休憩という組み方がよい。
冬は、木々の輪郭と湾の空気がよく見える季節である。寒さや風に注意しながら、短い散策を楽しみたい。観光客が少ない時期には、公園の静けさがより強く感じられる。
訪問前には、州立公園公式サイトで開園、料金、駐車、キャンプ、キャビン、トレイル状況、天候による影響を確認したい。自然の場所では、事前確認が旅を守る。水、靴、帽子、虫対策、日焼け止め、季節に合う服装を用意する。
そして、歴史の場所としての敬意も持ちたい。ここは、家族で遊べる公園であると同時に、バージニアの植民地史に関わる場所であり、先住の土地でもある。遊びながら、少し立ち止まる。風景の奥にある時間を想像する。それが、ファーストランディングをただの公園で終わらせない旅の作法である。